ギンモンセダカモクメ

Cucullia jankowskii Oberthür, 1884 

ヤガ科 

開長・35mm前後 

分布・北海道、本州、四国、九州 

環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧 

全体的に銀白色のイメージカラーな中型のガで、前翅には茶褐色の帯がいくつも通っている。後翅は全面が薄い褐色で、付け根部分ほどより色が薄い。一見して派手さのないガではあるが、日本に12種分布するこれの同属近縁種は、大半種が灰色の薄汚いなりをした成虫の姿を持つ。そのことを知っていれば、いかにこの種の姿が高貴で気高きものか、想像できるはずだ。チョウマニアに比べてガのマニアは人口が少ないが、そんなガマニア連中の間でもこいつの人気はそれなりのものと思われる。

河川敷や自衛隊演習場など、植生の遷移が進まぬまま(自然・人為要因の別なく)、開けた草原環境が常に維持される場所にのみ生息する。成虫は年一回、盛夏を少し過ぎたくらいの時期に出現するが、その出現期間はさほど長くない。日中は草葉の陰にでも隠れているようで、日没後すぐに活動を始める。ヘッドライトを点けながらの草原を歩いていくと、道行く花々にこのガが飛来して吸蜜しているのを見られる。夜の襲い時間帯になると、ヨモギ等の草葉に止まって休む姿が目につくようになる。

幼虫はヨモギ類を食草とする。冬が来る前に蛹となり、越冬して翌年の夏の終わり頃に羽化するようだ。

草原環境の全国的な減少に伴い、本種の見られる場所も減ってきている。反面、マイナー昆虫たるガゆえ、その生息状況にかかる調査はとてもじゃないが充実しているとは思えず、まだ未知の生息地が各地に隠されているはずだ。


※引用文献

後日追加。

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。