フジジガバチ

Ammophila atripes japonica Kohl, 1906 

体長・25-30mm 

分布・本州、四国、九州、南西諸島、中国、東南アジア、オーストラリア 

環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧 

すらっとしたウエストが凛々しい、大型の狩人蜂。メスは脚と腹部第一・第二節が、目の覚めるような深紅。オスは全身が黒っぽいが、光の加減により青い光沢を返す。南方系のハチで、国外では分布域が広いものの、日本ではかねてより生息地は限られており、なかなか見られない種だった。なお、南西諸島以南のものは、本土のものとは別亜種タイワンジガバチA. atripes formosana Strand, 1913とされる。

開けた広大な草原地帯で見かけることが多い。成虫は夏期に出現し、メスは地面に深い巣穴を掘る。そこへ、毒針で麻痺させた大型のガの幼虫を搬入し、自分の卵とともに巣穴を封印する。今のところ、獲物として公式に記録されているのはウスムラサキクチバだが、同属近縁種の生態から推測するに、恐らく手頃なサイズのガの幼虫であれば、獲物の種は問わないのではないかと思う。

私が以前本種を観察した西日本の草原では、赤土がむき出しの裸地よりも草が密生した地面で好んで営巣する個体が多く、観察にはずいぶん難儀した。また、他のジガバチ類に比べて警戒心が強く、近寄りがたい印象を持った。


一定の面積を持つ草原が広がっていることが、本種の生息に重要であるように思える。現代日本において、こうした環境は人の手で維持管理されにくくなってきているため、この美しくも数少ないハチは今後さらに見ることが難しくなるかもしれない。


※引用文献

後日追加。

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。