クチナガハバチ
Nipponorynchus mirabilis Takeuchi, 1941
ハバチ科
体長・5mm前後
分布・本州、九州
環境省レッドカテゴリ・情報不足
体色は黒く、腹部背面の付け根に多少の白い紋がある程度。とにかく小さくて目立たない羽虫だが、顔を拡大して見ると、まるでヒョットコのように口器が下側へ伸びており、ものすごく珍妙な面をした生物であることがわかる。
ハバチ科は、幼虫期に植物の葉を食べて成長する原始的なハチのグループ。その中でも、主にシダ植物を食草とする種で構成されるシダハバチ亜科という一群がある。クチナガハバチは、このシダ食いのシダハバチ亜科に含まれる一員なのだが、どういう訳かシダではなく被子植物のネコノメソウ類だけを幼虫期の食草に選んだ。なぜ、こんな餌の大転換をする必要があったのか、よくわからない。
成虫は、早春のごく短い期間だけ出現する。山の沢沿いの湿った所に繁茂する、ネコノメソウ類の群落上を低空で飛び回り、時々その花に降り立っては長い口吻を突き立てて吸蜜する。また、ネコノメソウの茎に産卵管を突き立てて産卵する様子も、運が良ければ見られる。ただ、これまで知られている生息地は、どこも人里からだいぶ離れた辺鄙なところにあるため、自家用車なしに出会いに行くのは容易ではない。
しばしばクチナガハバチと同所的に、これに酷似した近縁種ヒダクチナガハバチN. bimaculatus Naito, 1973が生息する。一応、形態的な差異はあるものの、野外でこの2種を目視にて区別するのはほとんど不可能らしい。
クチナガもヒダクチナガも、ネコノメソウの生育に好適な環境たる湿潤な森林帯が温存されれば、人知れず生き続けられると思われる。東日本のとある生息地は、かつてゴミの処分場建設に伴い消失が危惧されたが、からくも生息地は温存されているようだ。
※引用文献
後日追加。
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