ヤマトスナハキバチ

Bembicinus hungaricus japonicus (Sonan, 1934) 

ドロバチモドキ科 

体長・12mm程度 

分布・北海道、本州、四国、九州、屋久島 

環境省レッドカテゴリ・情報不足 


小型の狩人蜂の一種で、体は黒く、腹部には黄色い模様がある。複眼は緑色っぽい。海岸の砂浜や河川敷など、明るい砂地に単独で営巣するが、時に公園の砂場など内陸の人工的環境で集団営巣する場合がある。

成虫は夏期に多く見られる。メスは砂地に斜めに巣穴を掘り、最深部の部屋に1個産卵すると、巣口を塞いで外出する。本種を含む「アナバチ類」と呼ばれる狩人蜂の大半種は、巣を作った後で獲物を搬入して産卵する。そのため、まず何もない部屋に産卵してから後で獲物を搬入する本種の生態は、この仲間としては異例といえる。

獲物はヨコバイやウンカなど、植物の汁を吸って生きている同翅亜目昆虫。自身が抱えられる大きさならば、種は特に問わない。私が観察した限りでは、オサヨコバイやグンバイウンカ類など、自身の大きさに匹敵するサイズの獲物を狩ってくることもあれば、わずか3mm程度のウンカを狩ってくることもあった。

実際に彼らが獲物を狩る瞬間を見届けるのは、非常に難しい。どこで狩りをしているのかを突き止めるのが難しいから。海岸に営巣している個体群であれば、波打ち際から離れた海浜植物群落の辺りで盛んに獲物を探してチョロチョロ飛び回っているのを認められる。だが、動きが素早すぎるのと、警戒心が強すぎるのと、狩った獲物を空中でホバリングしながら刺すのとで、観察しやすい要素が一つもない。

首尾良く獲物を狩ったメスは、巣までそれを運ぶ。そして、戸締まりした巣口を開けて中に入り、最奥の部屋に獲物を置く。その後再び外へ出ると、巣口を閉じてまた獲物を狩りに行く。一つの巣内に、数十匹もの獲物を溜め込む。


生息地での個体数は、基本的に多い。しかし、周囲に同じような開けた砂地がいくらあっても、営巣が認められる区画は限られる。この傾向は、内陸部の生息地において顕著であるように思える。

自然の砂地環境が開発で失われると、生息が困難になる。また、駆け込み寺的に残された公園の砂場などでも、多数のハチが飛び交う様が危険視され、駆除されることがあるようだ。


※引用文献

後日追加。

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。