フクイアナバチ

Sphex inusitatus fukuianus Tsuneki, 1957 

アナバチ科 

体長・30mm前後 

分布・本州、九州(九州のものは別亜種とする見方あり)

環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧 

全身黒色の、非常に大柄な狩人蜂。体型の似た近似種がいるが、それらは顔面まで真っ黒ではないため識別は容易。

地中に巣穴を掘るメス。深さ数十cm程度の穴を掘り、その最深部に作った部屋へ獲物を搬入する。

麻酔行動。獲物は、樹上で生活する直翅目昆虫ハネナシコロギス。胸部の腹面に毒針を打つ。既存文献には、この精霊はハネナシコロギスしか狩らないような書き方ばかりされている。が、私が野外で観察した限り、実際にはコロギス科の範疇でさえあればもう少し獲物メニューの融通は利くように思える。

草むらに作られた集団営巣地。この写真の範囲内で二つの巣口が写っているのだが、それらは堆積した枯れ草の下に掘られている。精霊が今まさに巣を出入りする瞬間を見届けない限り、発見は絶対に不可能である。

枯れ草をどけて、むき出しにした巣口。まもなくここに、それまで姿の見えなかった寄生性のヤドリニクバエ類が飛来した。こいつらの寄生を恐れて、精霊はわざとこんな分かりづらい場所を選び営巣していたのだろう。


本種に関しては、「絶滅危惧の地味な虫たち」(ちくま新書)に既に詳しく書いた。

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。