ウマノオバチ
Euurobracon yokahamae (Dalla Torre, 1898)
コマユバチ科
体長・20mm前後
分布・本州、四国、九州、台湾、中国大陸、朝鮮半島、インド、ラオス、タイ
環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧
全身が鮮やかなオレンジ色をしており、メスは腹部覆面に白い部分がある。翅もオレンジ色を帯び、黒班を伴う。メスの腹端からは、著しく長い産卵管が突き出ており、その名の由来となっている。この産卵管はゴムのように弾力に富み、それでいてしなやか。複数のパーツが合わさって一本になっており、生時はまとまっているが、死ぬとホウキのようにばらけてしまう。
あまり鬱蒼としていない雑木林に生息し、成虫は年一回初夏に出現する。一カ所での発生期間は割と短いのが普通である。
クヌギやコナラなどの樹幹周辺を、ゆっくり飛び回る。長い産卵管をぶら下げて飛ぶ姿は、さながら赤い彗星である。
本種は、木の内部に巣くう大型カミキリムシ類の幼虫の寄生蜂として知られる。寄主としては長らくシロスジカミキリと考えられてきたが、実際にはミヤマカミキリであるとの指摘が近年なされた。
長い産卵管を持ち、木の内部にいる寄主を襲う寄生蜂は世に数多の種が知られるが、その多くは硬い産卵管を外側から突き立てて穿孔し、内部の寄主に産卵する。しかし、この精霊の産卵管は非常に柔らかく、これを用いて木を穿孔することができない。
そのため、メスは樹幹に開いたカミキリムシの幼虫の穿孔した穴を探して、まず自身がその中に潜り込んでしまう。そして、内部で体を反転させて穴から顔を出し、その体制で産卵管を穴の深部へ伸ばして寄生するようである。
産卵中のメス。
開発にともなう雑木林の消失などにより、各地で減少しているとされる一方、地域によってはむしろ増加しているとの見方もなされている。今後の消長が気になる種。
※引用文献
加賀玲子; 川島逸郎; 苅部治紀 (2018) ウマノオバチ Euurobracon yokahamae (Dalla Torre, 1898) (Insecta: Hymenoptera: Braconidae) の生活史, 特にその寄主について. Bull. Kanagawa prefect. Mus. (Nat. Sci.) 47: 59-66.
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