キタノツブゲンゴロウ

Laccophilus vagelineatus Zimmermann,1922 

ゲンゴロウ科 

体長・3.5mm程度 

分布・本州、ロシア沿海州、朝鮮半島,中国大陸 

環境省レッドカテゴリ・絶滅危惧ⅠB類 

頭部と胸部は明るいオレンジ色。上翅には薄い黄色と茶色からなるスジ状の模様が幾重にも走る。酷似した種がいくつかおり、正確に種を同定するには交尾器の形態を調べる必要がある。

非常に小型のゲンゴロウで、国内では本州の地理的に完全に隔たった2都道府県でのみ確認されている。不思議なことに、国内での生息地は人為的に相当荒らされたような池に限られる。すなわち、中国など大陸からウナギなどの魚類を、養殖のため持ち込んだり放流した経緯のある水系である。

既知の生息地が極めて狭いことから、希少な生物として環境省の絶滅危惧種に選定された。しかしその反面、あまりにも不可解な分布様式を示すこと、生息環境が異質に過ぎることなどから、実は中国から養殖用の魚類を生きたまま輸入した際、それに紛れて国内に侵入した単なる外来種に過ぎないのではないかとの疑いが浮上している。本種の由来に関しては、今後の研究の進展が待たれる。


※引用文献

疋田直之(2015) コウチュウ目。茨城県自然博物館総合調査報告書 -2013 年 茨城県の昆虫類およびその他の陸生無脊椎動物の動向-: 39-40

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。