クワトゲエダシャク

Apochima excavata (Dyar, 1905)

シャクガ科 

開長・40-55mm 

分布・北海道、本州、九州、中国大陸、朝鮮半島 

環境省レッドカテゴリ・ 準絶滅危惧

オスは全体的に、赤みを帯びた褐色に見える。翅は細長く、止まる際にはこれを扇子のように畳み、あたかもジェット機のような姿になる。同属で外見の酷似したオカモトトゲエダシャクは、少なくともオスはもっと赤みが強い風貌をしている。また、前翅の付け根近くを縦断する黒線が、クワトゲでは明瞭に「く」の字に曲がるのに対し、オカモトはほぼまっすぐ。

また、後脚の脛節には、クワトゲでは2対の、オカモトでは1対のケヅメがある点でも区別可能。

成虫は早春の短期間のみ出現し、日没後活発に飛翔する。灯火にも飛来するが、ほぼオスのみである。オカモトもそうだが、本種のメスは滅多に灯火へ飛来せず、採集がとても難しいことで蛾マニア連中の間では有名。

クワトゲはその名に反して、幼虫期にクワ以外にもヤナギ科、マメ科、バラ科など様々な樹種の葉を食べる広食性の種。古くは養蚕目的で栽培されていたクワの害虫だったらしいが、近年では激減した。養蚕業の衰退にともない、桑畑が少なくなったからという指摘もあるが、広食性たる本種が桑畑の減少のみでここまで減るはずがなく、恐らく別に原因がある。現に、同属近縁種で同じく広食性のオカモトの方は、全く減少傾向が認められない。


※引用文献

岸田泰則(2015) クワトゲエダシャク。環境省編 レッドデータブック2014 5。ぎょうせい、東京。pp.438.

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。