サツマキバナガミズギワゴミムシ

Bembidion nakamurai (Morita, 2008) 

オサムシ科 

体長・4mm程度 

分布・九州 

環境省レッドカテゴリ・絶滅危惧ⅠB類 

全身がごく薄い褐色で、若干上翅の色が濃い程度。複眼は大きめで、サーベルのような大顎が前方へ鋭く伸びる。米粒サイズながら、勇ましい姿の甲虫である。キバナガミズギワゴミムシ類は日本には数種が知られ、いずれも河口部の干潟や海岸の砂利浜など、塩分に晒される上に潮の干満の影響をまともに受ける環境(潮間帯)に特異的に生息する。

彼らは干潮時にのみ、干上がった海岸の地表を徘徊して小動物を捕食する。満潮の時間が近づくと、彼らは潮間帯の石下などの隙間に入り込み、そのまま水没してしまう。こうした隙間は、海面下に没してもわずかな空気が溜まっているため、これで呼吸しつつ次の干潮を待つのだ。まさに忍者の使う「水遁の術」。


サツマキバナガミズギワゴミムシは、その名の通り九州南部のとある河口域から得られた個体により新種記載された種である。そして、現在までに他の生息地は見出されていない。やや固く締まった砂質の干潟を好み、干潮時に地表を素早く駆けまわる。生息地では、カニの糞を食い漁る個体を見たことがある。手近にある動物質のものには、とりあえず食らいつくと思われる。


今のところ生息地の環境は、おおむね温存されている。しかし、河川の河口域は水質汚染の影響を受けやすい上、改修工事の脅威にも晒されやすい。何より一番の問題は、世界でも九州にしかいないこの希少な精霊の存在が、現地に住む一般の人々の間におそらく一切認知されていないことである。


※引用文献

後日追加。

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。