コオナガミズスマシ

Orectochilus punctipennis Sharp, 1884 

ミズスマシ科 

体長・4-6mm 

分布・本州、四国、九州 

環境省レッドカテゴリ・絶滅危惧Ⅱ類 

小型種。全身黒いが、体表を密に覆う褐色の細毛のため、全体的に茶色い昆虫に見える。紡錘形をしており、体高が高い。翅の先端はあまり尖らない。ミズスマシ類の例に漏れず、左右の複眼は上下に二分されており、水上と水中を同時に監視できる。

ミズスマシ類は、主として河川に住む流水性の種と池に住む止水性の種とに分けられるが、本種は前者に含まれる。大型河川の中流域に生息し、夜行性。日中は岸辺の草葉が水流に洗われている茂みに隠れている。水面から出た草の茎などにしがみついて休んでおり、日没後に水面に浮かび上がる。動きは極めて俊敏で、ぱっと見は水面に波紋のみが立っているようにしか見えない。夜間、この精霊を素手で捕獲するのは至難。

かつては各地の河川において、必ずしも珍しいものではなかったらしいが、近年では見られる場所は比較的限られる。上流域に比べて、開発や水質汚染の影響を受けやすい中・下流域に生息する性質が仇となったようだ。本種が記載された京都府では、ほとんど見られない状態になっている。


※引用文献

後日追加。

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。