コガタノゲンゴロウ

Cybister tripunctatus orientalis Gschwendtner, 1931  

ゲンゴロウ科 

体長・24-29mm 

分布・本州、四国、九州、南西諸島、小笠原諸島、中国大陸、朝鮮半島、台湾、アフリカ、オーストラリア 

環境省レッドカテゴリ・絶滅危惧Ⅱ類 

楕円形で平べったく、厚みのない体形。背面から見ると体の縁は黄色く、それ以外の部分は深い緑だが、この部分は光の加減により赤みがかって見える。腹面は褐色。

日本産ゲンゴロウ類としては、かなり大型の部類に入る。無印のゲンゴロウC. chinensis Mostschulsky, 1854よりは小型という意味に過ぎない。この大して小型でもない種にコガタノなどという和名をつけてしまったばかりに、日本産ゲンゴロウ類の大半を占める数mmサイズの種の和名に、さらに小さいことを意味するマメだのツブだのケシだのといった形容詞を乱発せざるを得ない状況になった。

池や沼に生息し、弱った魚や他の水生昆虫などを襲う肉食性。ただし、成虫は水草を食べることもあるという。しばしば水辺近くの灯火に飛来する。飛翔力がとても強く、明らかに本来の生息地ではない場所で単発の記録が出ることがある。絶海の孤島たる小笠原諸島からさえ記録があるのは驚愕に値する。

本種は他の大型ゲンゴロウ類の例にもれず、生息地の水質汚染や溜池の埋め立てなどにより一時期各地で激減した。しかし、2000年以降、どういうわけか九州を始めとした西日本各地で急激に勢力を盛り返しており、場所によっては池に網を入れるたびにこいつらが数匹入るような状況も見られる。

一見、絶滅危惧種が復活して喜ばしいようにも思えるが、その急増の仕方があまりにも不自然であること、本種以外の大型ゲンゴロウ類は相変わらず絶滅に瀕したままであることから、実はかえって何かよからぬことが起きている証ではないかと疑う向きもある。


※引用文献

西原昇吾、刈部治紀、北野忠、中島淳、永幡嘉之(2015) コガタノゲンゴロウ。環境省編 レッドデータブック2014 5。ぎょうせい、東京。pp.251.


精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。