イカリモンハンミョウ

Abroscelis anchoralis (Chevrolat, 1845)

オサムシ科 

体長・12-15mm 

分布・本州(石川県)、九州、中国大陸、朝鮮半島、台湾、インドシナ半島 

環境省レッドカテゴリ・絶滅危惧ⅠB類 

頭部と胸部は鈍い金属光沢を帯びた銅色。上翅には特徴的なイカリ様の模様をあしらい、少なくとも国内でこれと紛らわしい近似種はいない。

極めて美しい甲虫で、きめ細かな砂でできた海岸の波打ち際付近に生息するという、特異な生態を持つ。行動はきわめて敏捷で、肉食性。地面に止まったハエ類など、手近な場所に来た小動物に素早く走り寄って捕殺する。人の気配に敏感で、至近まで近寄るのがとても難しい。成虫は夏に出現する。幼虫は少し海岸線から遠ざかった植物群落周辺の地面に穴を掘り、通りかかる小動物を襲う。

国内での分布は奇妙で、大半の生息地が九州南部沿岸に集中する一方、なぜか地理的に隔たった北陸に小規模な産地がある。


汚染されていない広大で綺麗な砂浜海岸があり、さらにそこには一定規模の植物群落が形成されていることなど、生息の条件がかなりうるさい種。海岸線の開発行為により、生息地は縮小している。さらに、美麗で珍しいため、小規模な産地では虫マニアによる乱獲が脅威となりかねない。石川県では、条例で本種を採集禁止にしている。


※引用文献

橋村正雄、丸山宗利(2015) イカリモンハンミョウ。環境省編 レッドデータブック2014 5。ぎょうせい、東京。pp.84.

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。