ツツイキバナガミズギワゴミムシ
Bembidion tsutsuii (Uéno, 1955)
オサムシ科
体長・3.5mm程度
分布・本州、九州、南西諸島
環境省レッドカテゴリ・準絶滅危惧
全身が黒っぽい褐色で、ビール瓶のような透明感がある。ぱっと見、色黒のサツマキバナガミズギワゴミムシに似ていなくもないが、体サイズがずっと小さいのと、生息環境がまるきり異なるので、同定を間違うことはないだろう。キバナガミズギワゴミムシ類は、概して発達した後翅を持つため、しばしば夜間灯火に飛来することがある。しかし本種は後翅が退化しており、飛ぶことはない。翅を動かす筋肉も萎縮している関係で、他種のキバナガミズギワゴミムシ類に比べてナデ肩の体型をしている。
本種は、同属近縁種の例に違わず海浜性だが、それらよりも明らかに淡水の影響がより少ない海岸に生息する。私は、こぶし大程度の石が多く混ざる砂浜海岸で見たことがあるが、南西諸島ではサンゴ質の砂が堆積した海岸で見つかるようだ。潮間帯の中でも最も沖側の辺り(すなわち、最も潮の干満の差が激しい大潮の日の、最干潮時の波打ち際)に多く生息する。
干潮時にのみ活動し、満潮の時間が近づくと石下のわずかな隙間に入り込んでしのぐ。大潮の日の最干潮時の波打ち際に好んで住むことを考えると、この精霊がまともに地上で採餌活動を行えるのは、毎月十日とかその程度しかないということになる。
本種は最初、トカラ列島中之島の海岸から発見されたが、その後日本の各地で生息地が見出された。生息環境の特殊さや、小さくて目立たないこと、奇特なマニア以外探そうとしない手合いの虫であることを考えれば、まだまだ未知の生息地が隠されている可能性が高い。しかし、それらの中には発見される前に、水質汚染や自然海岸の埋め立てにより消失した所も少なくないだろう。
※引用文献
後日追加。
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