ケシゲンゴロウ

Hyphydrus japonicus Sharp,1873 

ゲンゴロウ科 

体長・5mm程度 

分布・北海道、本州、四国、九州、南西諸島(トカラ、沖永良部島)、朝鮮半島、中国大陸 

環境省レッドカテゴリ・ 準絶滅危惧 

ゲンゴロウの仲間としては球体に近い体型の持ち主で、体に厚みがある。頭部と胸部の大半は濃いオレンジで、上翅には黄色と黒の斑模様だが、この翅の模様の出方には多少とも個体変異が見られる。外見の酷似した近似種が複数おり、正確な同定は交尾器形態の精査が不可欠。

各地の水田や溜池に生息する小型のゲンゴロウで、動きは活発。冬季でも池をタモ網でさらうと採れる。幼虫は鋭いカマ状の大顎のほか、ゾウの鼻のように頭部から伸張した突起を備えている。この突起の用途は長らく不明だったが、最近この突起とキバを巧みに使って、プランクトンの一種カイミジンコ類を取り押さえ捕食する生態が判明した。


生息地たる溜池の減少や水田環境の消失などが重なり、各地で減っている。昔の図鑑にはしばしば「普通種」などと書かれているが、少なくとも私にとっては幼少期にこのゲンゴロウをどこの水田や池でも見た覚えがなく、当時から既に身近なものではなかった。


※引用文献

 Hayashi M, Ohba S (2018) Mouth morphology of diving beetle Hyphydrus japonicus (Dytiscidae: Hydroporinae) is specialized for predation on seed shrimps. Biological Journal of the Linnean Society.

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。