ダイコクコガネ

Copris ochus (Motschulsky,1860)

コガネムシ科 

体長・30mm弱 

分布・北海道、本州、九州、中国大陸、朝鮮半島、ロシア 

環境省レッドカテゴリ・ 絶滅危惧Ⅱ類 

全身漆黒で光沢があり、雄はまるでサイのような一本角を頭部に持つ。日本最大級の糞転がしの一種で、牛馬が放牧されている平地の牧場に生息する場合が多いが、シカなどの野生動物が多い森林に生息する場合もあるという。

牛馬の糞に集まり、餌とする。繁殖の際には、糞の直下地面に雌雄ペアが協力して深い縦穴を掘り、その中に糞を引き込む。穴の深部には部屋を作り、そこで糞を複数の洋梨状に整形した上で、メスは洋梨一個につき一卵を内部に産み付ける。孵化した幼虫は洋梨を内側から摂食して成長する一方、成虫は部屋内で洋梨がカビないよう管理する。メスの方が長く巣内に留まる。

分布域は広いものの、近年の全国的な酪農の衰退を受け、どこでも生息地が減っている。さらに、近年家畜に投与される駆虫剤が、こうした糞転がしの生育に悪影響を与えるという懸念がなされている。

一方、近年各地の山林でシカの個体数急増が問題になっているが、こうしたシカの糞を利用してしぶとく生き残っている地域もあるらしい。


※引用文献

川井信矢 (2015) ダイコクコガネ。環境省編 レッドデータブック2014 5。ぎょうせい、東京。pp.271.

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。