セマルヒメドロムシ

Orientelmis parvula (Nomura & Baba, 1961)

ヒメドロムシ科 

体長・1.5-1.6mm 

分布・本州、九州 

環境省レッドカテゴリ・ 絶滅危惧Ⅱ類

全身が黒っぽく、背面から見るとレモンのような体型をしている。上翅には2対のオレンジ色の紋を背負う。

恐ろしく微少な水生の甲虫。きわめて限られた地域の、水質のよい河川中流域の川底にしか住まない。ヨシなどが繁る川岸が住処で、水中に出て流れに洗われている根に取り付いている。川底が砂っぽいことが、本種の生息には重要らしい。個体数は多くはなく、あまりにも小さすぎることもあって、発見が難しい精霊である。本種が最初に見つかったのは新潟県だが、1961年に記載されて以後、九州で見つかるまで40年以上も生息が確認されていなかった経緯を持つ。

本種の好む環境は、河川改修などで容易に変化してしまうため、どこの生息地も安泰ではない。九州北部のいくつかの産地では、明らかに絶滅しているとしか思えない。また、新潟の模式産地も壊滅しているらしい。

本種の生息環境温存のためには、ある程度の河川の氾濫が必要である。よって、近年増加する自然災害に備えた改修工事が各地で無秩序になされるならば、本種を取り巻く状況はより悪化するかもしれない。


※引用文献

上手雄貴(2015) セマルヒメドロムシ。環境省編 レッドデータブック2014 5。ぎょうせい、東京。pp.276.

精霊の庵 - 無名の絶滅危惧昆虫

環境省レッドリストに掲載された、800種余りの絶滅危惧昆虫たち。そのうち過半数を占めるのは、小さくて地味で取るに足らない外見のハエ、ハチ、カメムシ、ガ、ハナクソサイズの甲虫など。図鑑にさえしばしば載らず、一般に存在も知られぬまま滅び行く、小さき者達の集う場所。